お店で購入した食品に見慣れない異物が混じっていたときには、不安になる人が多いでしょう。このような異物がどういうものかを専門的に分析するのが、異物検査です。専門機関で行われている異物検査には、いろいろなアプローチがあります。

ここで紹介する燃焼試験も異物検査の1つです。燃焼試験の目的やチェックポイント、結果からわかることなどを今回は解説していきます。

「注射材の異物検査の方法について」

燃焼試験の目的は?

異物検査の燃焼試験は、物質を燃やして異物の正体を見極めることが目的です。食品に混入する異物には人間が食べても特に問題がない原料由来の物質もあれば、プラスチックや金属といった食品とはまったく異なる物質もあります。

食品衛生法では、健康に害を与える異物や衛生上問題になる異物が混入した食品の販売を禁止しています。そのため、異物検査で異物の正体を見極めることは消費者だけでなく、販売した側にとっても重要です。

燃焼試験が行われるときの流れは

異物検査は、一般的に異物を観察するところから検査がスタートします。ある程度の大きさがあったり、特有の臭いがしたりする異物は肉眼で観察する簡単な検査で正体が判明する場合もあります。ただ、ごく小さな異物は実際に見ても正体がわからないケースもあります。

このような場合には異物をカットして、組織を顕微鏡で観察する検査などが行われます。組織を見ても今ひとつ判断がつかないときには、燃焼試験をはじめとするより詳しい検査を行って詳細な情報を得るのが通常の流れです。

燃焼試験は、火の強さなどを調節しないと異物が燃えてしまうリスクがあります。異物が燃えてなくなってしまった場合、以後の検査ができなくなってしまいますよね。こういったリスクを避けるために、燃焼試験は異物検査の後半や最後に行われるケースが多いです。

燃焼試験のチェックポイント

燃焼試験を行うときには、いろいろなチェックポイントがあります。例えば、異物を燃やしたときの臭いです。物質によっては、熱を加えると特有の臭いを発することがあります。どのような臭いがするかは、燃焼試験を行うときに検査員がまずチェックするポイントです。

また、どのような燃え方をするかもチェックポイントの1つです。燃やしたときに変形するか、それとも黒っぽい炭になるかは異物の正体を判断するときの重要な決め手になってきます。炎の状態も試験ではチェックされています。

物資の燃え方によって、炎の大きさや色、煙の有無などが変わることから、検査員は異物だけでなく炎の部分や煙の有無もしっかりと確認することが多いです。炎に近づけたときにすぐに着火するかどうかも物資の正体を判断する参考材料にできます。

燃焼試験は一見すると異物を燃やすという単純な検査に見えますが、実際にはさまざまな点から物質の正体を見極めていくデリケートな試験と言えます。

燃焼試験からはいろいろなことがわかる

燃焼試験で複数のポイントをチェックすると、異物の正体が徐々につかめてきます。例えば、鶏肉などに混入していることが多い骨や軟骨などは燃やしたときの臭いや燃えたときの状態の変化からだいたい判別がつくケースが多いです。

骨や軟骨などは、燃やすと独特の臭いが生じます。燃え終わった後に黒っぽい炭が残れば、骨や軟骨である可能性がさらに高くなるでしょう。また、異物が髪の毛だったときも燃焼試験の結果が参考にできます。髪の毛を燃やすと、ケラチンが燃える臭いが生じます。

髪の毛は燃えた後には黒い炭が残ることから、状態の変化を観察すればおおよその判別ができるケースが多いです。プラスチックなどの合成樹脂の場合は、燃やすと表面が溶けて形が変わります。また、樹脂が燃える臭いからもプラスチックであることはだいたいわかるでしょう。

ポリエチレンなどのビニールは、燃やしたときに炎に特徴が現れます。黄色みや青みがかった炎が見られるときには、ポリエチレンの可能性が出てきます。ポリエチレンは熱を加えると溶けて固まる性質を持っているため、燃えた後の状態からもおおよその推測はできるでしょう。

ビニールは一般的に燃えやすいことから、着火が早いかどうかも判断の決め手になります。

健康被害につながりかねない異物は?

食品に混入した異物は異物検査で原料由来の物質と判明するケースも多いため、気になるものを見つけても必要以上に慌てることはないかもしれません。ただ、健康に害を与えかねない異物も中には見られます。例えば、食の安全を脅かす可能性があるのがプラスチック片や金属片などです。

このような異物が混入した食品を誤って食べてしまうと粘膜などに傷をつけてしまう可能性があるため、注意が必要です。食品加工の場では、調理器具や洗浄器具の破片、梱包用資材の一部分などが混入するケースもあります。

このほか、カビや寄生虫なども健康に害を与える恐れがある異物に挙げられます。カビは、種類によっては強力な毒性を持ちます。例えば、ピーナッツなどに生えるカビはアフラトキシンと呼ばれる発がん成分を産生することで知られています。

購入した時点でカビのような異物が見られたときには、食べても問題がないかどうかを慎重に判断した方が良いでしょう。青魚に多い寄生虫も健康被害につながる異物の1つです。サバなどに見られるアニサキスは、白い糸状の寄生虫です。

このような異物がついた食品も少し注意が必要になるでしょう。異物かどうかが心配なときは食品から取り除いておき、販売店などに相談してみましょう。

異物検査を請け負う専門機関がある

燃焼試験などの異物検査をする場合、専門機関に依頼をするのが一般的な方法です。千葉県市川市にある異物総研株式会社などは、食品や飼料、建物などの異物検査を行っている会社です。こちらの会社で検査を申し込むときには、複数のコースから選ぶことが可能になっています。

各コースには燃焼試験や試薬溶解試験などの複数の試験が含まれており、効率よく異物の正体が見極められます。コースを選んで異物を異物総研株式会社宛てに送ると検査が行われ、後日に報告書が発行されます。ちなみに、異物検査の料金や結果がわかるまでの日数はコースによって変わる仕組みです。

どのようなコースが適しているかは、異物の特徴などによって異なります。申し込みをするときに異物の特徴を伝えてどのコースを選べば良いかを聞いておくと、適した試験を受けて異物の正体がチェックできるでしょう。

関連サイト>>残留農薬検査、農薬・食品分析、食品検査 - キューサイ分析研究所(QKEN) | 異物検査 | 検査項目